鮮やかな緑色のドレスに包まれた胸を威勢よくそらしながら、ガブリエラは兄に助けを求めた。
実際、それは命令に近かったが、いままでこの二人の利害は一致することが多かったから、わざわざ相手を説き伏せる必要などなかったのだ。
それが。
ヒューバートは珍しく落ち着かない様子で、ガブリエラではなくどこか壁と床の中間あたりに視線を這わせている。
時々、あごのあたりに手を当てて、なにか聞き取れない独り言を呟いていた。
「お兄さま! まさか、お兄さままであの小娘に熱を上げているだなんて言わないでちょうだい!」
ガブリエラの苛立ちはついに爆発し、ヒステリックな金切り声が上がった。
「だいたい、お兄さまの好みはもっと洗練された高貴な女性だったじゃないの。成金の小娘なんて歯牙にもかけなかったはずよ!」
その成金の小娘も、今となっては伯爵夫人であり、ガブリエラと並んでなんの遜色もない同等の身分であるわけだが──もちろん、そんなことは認めたくはない。
兄がオリヴィアを気に入っているのは最初から分かっていたが、それはあくまで誘惑の相手としてであって、恋だとか愛だとか、そんな名のつく感情とは関係のないものだと思っていた。
いや、そうでなければならない。
少なくとも兄くらいは、冷静でいてくれないと困るのだ。
「お兄さまは、最初からあの小娘を誘惑するおつもりだったのでしょう? どうか諦めないでくださいな。ノースウッド伯爵は……シェリー酒で少し気が立っていらしただけなのよ」
ヒューバートがふいに顔を上げた。
まるで、今やっとガブリエラの存在に気づいた、というように瞬きをしてみせる。
それはまったく兄にそぐわない仕草で、ガブリエラはさらに怒りを爆発させた。
「お兄さま!」
「分かったよ、ガビー。少しその金切り声を抑えてくれないか。それから……彼女を悪く言うのは控えてもらおうか」
ガブリエラは不快そうに眉をひそめた。
「彼女、ですって?」


