しばらくすると、エドモンドの息が少し落ち着いたものに変わって、そのぶんだけ彼の瞳に浮かぶ焦燥が増すようだった。
「私には、耐えきる自信があった。少なくとも初めは……」
ぽつり、ぽつりと──
小さな少年が告白をするように、エドモンドは不器用に呟きはじめる。
「彼女を愛さないでいられる自信が。愛してしまったあとは、彼女のために別れを選ぶだけの分別を持っていると、信じていた」
エドモンドの筋立った大きな手は、なにかを掴もうとするように宙でぎゅっと握られていて、今にも震えだしそうだった。
ローナンはしばらく黙って兄を見守っていたが、そのやせ我慢をする様子があまりにも痛々しい気がして、ついには肩をすくめながら口を開いた。
「あの盛大な口付けのあとに、もう、後悔しても遅いんじゃないの?」
強烈な拳が飛んでくるのを覚悟していたローナンだが、エドモンドは意外なほどすんなりとその助言を受け入れた。
「そのとおりだ」
ノースウッド伯爵エドモンド・バレット卿の声は確信に満ちていた。
そう、
このバレット家の当主が確信を持ってなんらかの行動をとるとき、そこに迷いがないのを、ローナンは知っている。兄の決心を壊せるものなどそうないのだ。
太陽さえ恐れをなして昇るのをためらうような、
そんな夜が始まるかもしれないのを、ローナンは感じていた。


