ちょうど陽気なメヌエットが始まったところだったので、二人はなんの難もなく踊りの輪の中に溶け込んでいくのに成功した。
ローナンは気軽な踊りの相手としてとても適役で、すいすいとオリヴィアをリードしていく。
当然のなりゆきとして、ローナンの片手はオリヴィアの腰辺りに触れていたし、オリヴィアの手もローナンの肩に置かれていた。
姿かたちは似ているのに、兄と弟ではだいぶ感覚が違う。
オリヴィアは、人当たりのいい義弟に上手くリードされることに安心を覚えていたが、エドモンドとの時のような精神の高揚はまったく感じない。
やはりオリヴィアにとっての特別な男性はエドモンドだけで、ローナンは親しみのある家族にすぎないのだ。
ただし……オリヴィアがそうは思っていても、他人の目に映る彼らはそれなりに意味深だったようだ。
特に──
「ねえ、兄さんがこっちを見てるよ」
と、ローナンは踊りながらオリヴィアの耳元に忠告した。
「僕を……そうだな、殺す以外のことなら何でもしかねないような目でね。まるっきり見込みがないってわけじゃないみたいだ」
オリヴィアはちらりと、ローナンの肩越しに言われた方を見た。
探すまでもなく……エドモンドは確かに、ローナンが言ったような険しい顔をしてこちらを見ていて、今にもこちらに踏み込んできそうだった。
オリヴィアはごくりと息を飲んだ。
「誰か、彼の頑なさを砕くことはできる人はいるのかしら」
「君じゃなければ、誰もできない。だから君には頑張ってもらわなきゃ……ほら、次の曲が始まる前に行っておいで。幸運を祈るよ」
曲が終わりに近づくのを見計らって、エドモンドが人々の間を縫うように二人に近づいてきた。その歩みは、無防備な獲物に接近しようとする野獣のようだ。
ローナンは機微よくオリヴィアを離すと、彼女を舞踏室から押し出すようにうながした。
そして、慌てて走る彼女の背中を見送ったあと、眼光炯々と近づいてくる兄と対峙するべく、後ろを振り返った。


