*
あの、嫌味で意地悪な老執事……もとい、義理の祖父の狡猾さを恐れて今まで遠慮してきたけれど、どうもそうも言っていられなくなったのだと、オリヴィアはついに決心をした。
──『呪いは存在しない。まぁ、多分、な』
あの言葉の裏づけを取らなくてはならない。それも今すぐに!
オリヴィアは歩きやすいようにスカートの裾を少しだけ持ち上げながら、群集の間を縫うようにして舞踏室を横切ろうとしていた。時々、驚いたような顔をした人々がそんな彼女をじろじろと見ているが、オリヴィアは構わずに先に進む。
かなり人が多いし、ドレスでは走り難いので、あまり早くは歩けない。
それでもオリヴィアは威勢の限りを張って、どんどんエドモンドから離れていった。
まったく、バレット家の男たちときたら、代々かなり頑固に生まれついているようだ。
あれほど情熱的な口付けがあった後で……あれほど、二人の心が通い合ったと思ったあとで、それでもまだ別れなければならないなんて、オリヴィアにはもう信じられなかった。
そんな未来は考えたくないし、考えられない。
二人の想いの妨げになっているのが『バレット家の呪い』だけなら、それを解かなければならない。
幸い、その鍵を握っているのはピートらしいと分かっている。
不幸なのは、そのピートが、孫よりさらに頑固で扱いづらいことだが……。怖気づいている場合ではない。
二人の未来のために!
オリヴィアはもう少しで広い舞踏室を抜けることができそうだった。
しかし途中、
「おっと」
という、男性の声と一緒に、肩をつかまれて足を止められてオリヴィアは振り向いた。
勢いづいていたので、歩みを邪魔されたことに短い苛立ちを感じたが、それも一瞬のことだった。見上げるとそこには親しみのあるローナンの笑顔があった。


