オリヴィアが見上げると、エドモンドの表情はいつもに増して厳しかった。
あまり機嫌が良さそうには見えない。
彼はいつもの厳格さにくわえて、威圧的な雰囲気を存分にかもし出していて、今にも咆哮を上げようとしている獅子のようにさえ見える。
オリヴィアは自分の立場がよく分からなくなって、つい、助けを求めるようにヒューバートの方をちらりと見やった。
てかてかに撫で付けられた金髪を少し乱したヒューバートは、その貴族的な口をまぬけに開いたまま、エドモンドとオリヴィアを交互に見ていた。しかし、オリヴィアと目が合うと、ヒューバートは正気を取り戻したようだった。
ごほんとわざとらしく咳をすると、姿勢を正す。
「エドモンド……君が人前でこんな大胆なことをする男だとは思わなかったが」
「私もだ」
エドモンドは自分で答えた。
ヒューバートは短いうなり声を漏らし、居心地が悪そうに天井を仰ぎ見た。
オリヴィアは助け舟を出してくれそうな人物を失ってますます焦ったし、ガブリエラは土性骨のない兄に憤慨してさらに顔を赤らめた。
「まぁ……まぁ……こんなことが許されるとでも……」
わなわなと手を振るわせたガブリエラは、いかにも悔しそうに唇をゆがめ、エドモンドに対峙するのを諦めてオリヴィアの方にキッと向き直る。
「あなたは自分のしたことを分かっているのかしら、お嬢さん?」
ひどく相手を見下した目で、ガブリエラはじろじろとオリヴィアを眺めていた。
「まるでお腹を空かせた猫みたいにあちこちの男にすり寄って、そのくせ夫が他の女性と踊るだけでも気に食わなくて、彼を誘惑したのね。恥というものがないの?」
「なっ、なにを言っているのか分かりません。私はただ……」
「お黙りなさい!」
ぴしゃりとオリヴィアの抗議をさえぎったガブリエラは、つかつかとおびえる子猫の前に詰め寄った。
「いったいどんな手を使ってエドモンド様と結婚したのかしら。無垢そうな顔をして、きっと誘惑がお上手なのね。それともお金の力があったのかしら」


