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あまり踊りが得意ではないオリヴィアは、騒ぎに興じるよりも壁の近くのすみっこで静かに音楽を聴いている方が好きだった……。しかし、今夜ばかりはそうはいかない。
なかば強引にヒューバートに誘われたカドリールだったが、なんと前の列のすぐ正面にはエドモンドが入っていて、隣り合って踊る形になっている。
つまり、エドモンドとも踊ることになるのだ!
それはとても素晴らしいことに思えた。──彼の表情を確認するまでは。
(わ、私が失敗をするとでも思っているのかしら……!)
エドモンドはすでに、オリヴィアが彼の靴を踏んづけてしまったのを厳しく叱責するような渋面で、こちらを睨んでいた。
彼のパートナーは例のヒューバートの妹とやらで、こちらは対照的なほど華やかな笑顔を見せながら、隣の彼をうっとりと見つめている。
きらきらの金髪がまぶしい美女で……おまけにエドモンドの瞳の色に合ったドレスを着ていた。
桃色のドレスに包まれたオリヴィアの胸元が、急にどくんどくんと鼓動をせき始める。
誰でもいい。
彼に、近づか、ないで。
オリヴィアの中に、いままで感じたことのないような嫉妬が駆け巡った。
いきなり周囲の空気が薄くなっていくような息苦しさがして、つい、胸元の宝石を片手できゅっと握る。
──本当に、私たちは、今夜までなの?
この宴が終わったら、この踊りが終わったら、この瞬間が果てたら。
まるでこの結婚もこの恋も存在しなかったように離れ離れになって、お別れしなければならないの?
思い出と、切なさと苛立ちの混ざった複雑な思いが、行き場所を求めてぐるぐると胸の中を踊り始めているようだった。


