楽団の演奏する音楽が踊りのための軽快な調子に変わってくると、人々は遠慮を捨ててどんどん饒舌に、そして大胆になっていくようだった。
それにしたがって、エドモンドとオリヴィアは二人の世界に浸っているわけにはいかなくなってきた。
数人の知人たちに声を掛けられて、エドモンドは妻を紹介しなければならなくなった。
オリヴィアはエドモンドより愛想のいい挨拶が得意のようで、エドモンドの力強い腕から開放されると、ドレスの裾を慌てて手で撫で付けながら挨拶を返して回った。
「あなたは幸せ者だな、ノースウッド伯爵。なんと美しい奥方だ」
ランデス卿と名乗る背の高い男性が近づいてきて、うやうやしくオリヴィアの前に頭を下げた。
「どうか私と一曲踊っていただけませんかな、マイ・レイディ? ワルツはお好きですか? 一曲だけですぐにお放しいたしますよ」
それが最初の申し出だった。
あとに長々と続く踊りの相手の申し出の、はじまりだった。
オリヴィアが遠慮がちにエドモンドを見上げると、彼はむっつりと唇を一文字に引いて不快感を露わにしているように見えた……が、次の瞬間には、
「もちろんだ。楽しんできなさい、マダム」
と言って、オリヴィアをランデス卿の前に押しだした。


