バタン!
と、突然、扉が大きな音を立てて開いたので、二人ははっとして部屋の入口に顔を向けた。
マギーが肩で息をしながら立っていた。
階段を走って上ってきたのか、すっかり顔が紅潮している。手には毛のからまったままのブラシが握られていて、彼女自身の髪もぼさぼさだった。
「あの老いぼれた野獣ときたら!」
怒りに声を震わせて、マギーはブラシを持った片手を高く振り回した。「腹をすかせた熊よりも始末が悪いね! ああしろこうしろと文句ばかり! 私にはマダムのドレスの世話があるんだから自分でやりなと言ったら、エドモンドにやらせておけと言うんだよ。どうも本当にそれでも良かったみたいだけどねぇ……」
意味ありげなマギーの視線が、エドモンドとオリヴィアの両方をじっくりとなめつける。
オリヴィアは真っ赤になり、エドモンドは一歩オリヴィアから離れた。
「ああ、離れる必要はないよ。もうすぐ出発だ。仕上げにドレスを着せるだけだからね、マダム、あんた本当に綺麗だよ」
と言って、マギーはオリヴィアに歩み寄りながら両手を差し出した。
マギーからの温かい抱擁を受けたオリヴィアは、安心に目を閉じて彼女を抱き返した。
──エドモンドと別れるということは、バレット家やノースウッドと別れることをも意味している。
こんなに彼らを好きになりはじめたのに。
オリヴィアは鼻のあたりがツンと痛むのを感じて、それを周りに悟られないように我慢しなければならなかった。
マギーはオリヴィアから身体を離すと、あらためてまじまじと彼女を見つめて、頭を振った。
「エドモンドの旦那、あんたはとても素晴らしいものを手放そうとしているよ」
離縁宣言を聞いてからここ数日のマギーは、常にエドモンドに辛辣だった。無理もない。
マギーはいつの間にかオリヴィアを実の娘のように可愛がり始めてくれていたのだから。
「さあ、ドレスを着せてあげようね、マダム。今夜は誰もがあんたの虜になるよ、誓ってもいい」


