オリヴィアは木箱を受け取り、目の前のエドモンドをじっと見上げた。
彼の瞳はどちらかといえば無表情に見えたが、ずっと覗いていると、その奥に得体の知れない熱が篭っているのが分かる。
彼もこの最後の夜に何らかの葛藤を抱いているのだろうか……。
そうだとしたら、オリヴィアは希望を抱いていいのだろうか。
木箱は思ったよりも重く、小さな鉤型の留め具で閉じられている。
視線を落としたオリヴィアはゆっくりとした動作で木箱を開いた。
現れたのは、大きな緑色の石をいくつもあしらってある金製の首飾りと、それに合わせた小さな耳飾りだった。オリヴィアは驚いてもう一度エドモンドを見上げた。
エドモンドもオリヴィアを見下ろしていた。
「これを……私に?」
にわかには信じられなくて、オリヴィアは震える声でたずねた。
宝石は大きく胸元を飾るつくりで、それが細い金の鎖に続いている。
宝石の価値だけでなく、見事な職人の仕事が随所に施されており、それだけでもかなりの値打ちがありそうだった。
こういってはなんだが、エドモンドは特に裕福な男というわけではない。しかしこの首飾りはかなり高価な品のはずだった。
オリヴィアが心配げな表情をしていると、エドモンドは口元に薄い笑いを浮かべて、手短に説明した。
「石はもとから屋敷にあったもので、それを金細工職人に作らせただけだ。昔から私に借りのある男で、ただ同然の値段で仕事を引き受けてくれた」
「でも、大変だったでしょう」
「あなたがこれを気に入らなければ、確かに、彼は大変なことになるだろうな」
そんなことがあるはずもない。
首飾りは息を呑むほど美しく、そしてエドモンドの瞳と同じ色をした宝石はどんなものより輝いて見えた。オリヴィアは喜びに溢れそうになる涙をこらえながら、なんとか微笑んだ。
「いいえ、とても綺麗だわ。ありがとうございます……。私にもなにか、あなたに差し上げられるものがあればいいのに」
「必要ない」
エドモンドは短く答えた。「あなたは十分なものを私に与えてくれた」
「そうでしょうか」
と、オリヴィアは呟いた。


