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いままでオリヴィアは舞踏会や人々の集まりについて、ある一つの信念を持っていた。
『微笑みが肝心』というものだ。
ダンスの誘いを受け入れるのも、断るのも、噂話や遊戯の輪に入ったり出たりするのも、どれだけ円滑に進められるかはすべて微笑みにかかっていた。
オリヴィアは人々の熱気が苦手で、大きな舞踏会に行くと必ず壁際に避難するはめになる。
そこでいわゆる壁の花になるのだが、再びオリヴィアを広間に連れ戻そうとする魔の手から逃げるには、この微笑みが欠かせないものであった。
「ごめんなさい、気分が優れないの。またの機会に誘ってください」
と言ってにっこり微笑めば、大抵の場合は許された。
舞踏会や夜会が嫌いだと思ったことはなかったが、もっと短ければいいのにと、いつも思う。
大規模な舞踏会は、午後から人が集まりだし、日の暮れる頃に始まって夜の闇が消えるまで続いた。オリヴィアはいつも疲れて眠くなってしまう。可能なら控えの小部屋で寝入ってしまうことも少なくなかった。
酒が苦手なのも理由の一つだろう。
ラム入りのパンチが一杯あれば、オリヴィアはもううとうとしてしまう体質だった。
でも今夜は──今夜だけは、宴は、長ければ長いほうがいい。
壁の花に甘んじているつもりはなかった。
今夜は、
今夜だけは。


