Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 バレット家の屋敷についてから、やっと一晩明けたばかりであるが、オリヴィアはすでに夫について一つ理解を深めた。
 ──彼は有言実行の男である。

 ノースウッドの朝は冷たかった。
 もう五月も終わりに差しかかる時期だというのに、まるで二月の朝のような寒さで、オリヴィアはシーツの中で身震いした。目を覚まして朝日の差す窓を見やると、うっすらと霜のようなものがかかっていて、その結晶が光に反射し、キラキラと眩しかった。

 ああ、
 綺麗……。
 じゃあ、
 もう少し寝ましょう。

 オリヴィアは滅多に早起きをしなかったが、それは彼女が特別だという意味ではなく、都会の裕福層は誰でも似たり寄ったりだった。
 貴族(ノーブル)は朝十時前に起きてはいけないのだ。だって、私たちが早起きしたら、召使いたちは今よりもっと早起きしなくてはいけなくなる。

 冷たくはあるが澄んだ朝の香りを鼻腔いっぱいに吸い込むと、オリヴィアは二度寝を決め込むためにベッドの中で昼寝をする猫のように丸くなった。
 オリヴィアに与えられた女性用のベッドは、一人向けで小さかったが、寝心地は悪くない。

 そう、エドモンドとオリヴィアは、昨夜も床を共にしなかったのだ。