昨夜の出来事だった。
真夜中、いや、もう朝に近い時間だったかもしれない。寝室は静寂に包まれていたが、エドモンドの五感は恐ろしいほどに研ぎ澄まされていた。隣の部屋の妻の寝息が、聞こえてくる気さえする。
オリヴィアの部屋へ続く扉の前に立ったエドモンドは、胸のうちで相反するふたつの感情としばらく戦っていた。
──入れ。
──入るな。
そして、欲望は理性を倒した。
エドモンドがノブに手をかけると、扉は乾いた木の音を少し立てただけで滑らかに開いた。内側から鍵を掛けられるはずなのに、オリヴィアはそれをしていなかったのだ。
唾が喉を上ってきて、エドモンドはそれをごくりと飲み込んだ。
さいわいオリヴィアは眠りの深い性質のようで、エドモンドが部屋に入ってきても、まったく目を覚ますようすを見せない。しかし、エドモンドはそれでも十分に気を付け、静かに部屋を歩いた。
燭台の火はとっくに消えていて、穏かな月明かりだけが侵入者の視界を助ける小さな部屋で、オリヴィアは深い眠りに落ちていた。
彼女の髪は下ろされていて、白い枕の上に緩やかな波を描いて広がっている。白い肌は陶器のように滑らかに輝いていて、そして、目をつぶった彼女の輪郭は神々しいまでに美しかった。
──これを。
こんなものを目の前に差し出しておいて、それに触れるなと、運命はエドモンドに強いているのだ。


