「それは……なにか、習慣的なことでしょうか」
聞いたことがある。都市から遠く離れた田舎では、その土地独特の習慣や迷信があるものだと。
しかしエドモンドは厳かに答えた。
「違う。私たちは結婚した。君はレディ・ノースウッドとなった。君はこの屋敷の女主人で、私の妻だ。しかし私たちが床を共にすることはない」
「…………」
オリヴィアは大きくて青い瞳をまん丸に見開いて、ノースウッド伯爵エドモンド・バレット卿を食い入るように見つめた。
彼も着替えていないが、上着の前ははだけており、逞しい喉元と胸の上のほうがのぞいている。
至近距離にある彼の顔は、ほどよく日焼けしており、精悍で彫りの深い顔立ちはあらためてうっとりしてしまいそうな男らしさがあった。どう控えめに見ても、エドモンドは荒削りながらも魅力的な男性であり、オリヴィアの夢見た夫像そのものだった。
それが──何と?
床を共にすることはない?
「つまり──」
オリヴィアの声なき疑問を汲み取ったかのように、エドモンドは説明を続けた。
「私は君を抱かない。したがって君が私の子を生むことはない──そういうことだ」
聞いたことがある。都市から遠く離れた田舎では、その土地独特の習慣や迷信があるものだと。
しかしエドモンドは厳かに答えた。
「違う。私たちは結婚した。君はレディ・ノースウッドとなった。君はこの屋敷の女主人で、私の妻だ。しかし私たちが床を共にすることはない」
「…………」
オリヴィアは大きくて青い瞳をまん丸に見開いて、ノースウッド伯爵エドモンド・バレット卿を食い入るように見つめた。
彼も着替えていないが、上着の前ははだけており、逞しい喉元と胸の上のほうがのぞいている。
至近距離にある彼の顔は、ほどよく日焼けしており、精悍で彫りの深い顔立ちはあらためてうっとりしてしまいそうな男らしさがあった。どう控えめに見ても、エドモンドは荒削りながらも魅力的な男性であり、オリヴィアの夢見た夫像そのものだった。
それが──何と?
床を共にすることはない?
「つまり──」
オリヴィアの声なき疑問を汲み取ったかのように、エドモンドは説明を続けた。
「私は君を抱かない。したがって君が私の子を生むことはない──そういうことだ」


