「マダム」
という声が上の方からして、オリヴィアはゆっくりと瞳を開けた。
「起きなさい。ここでは何でもかんでも召使がやってくれるわけではない。顔を洗って着替えをするくらい、自分で済ませてくれると助かる」
「……え……」
ぱちりと目を見開く。
すると、着の身着のままベッドに横たわったオリヴィアのすぐそばに、エドモンドが腰掛けていた。
二人分の重さでベッドがぎしりと音を立てる。オリヴィアは何度か大きな瞬きを繰り返した。
「私……」
「眠っていたようだ。疲れているのはわかるが、だったら下の食事を断るなり、風呂を用意させるなりさせるべきだろう。君はここの女主人になったのだから」
エドモンドは、法律文でも並び立てるような平淡さで、目を覚ましたばかりの新妻に諭し始めた。
オリヴィアはゆっくり起き上がろうとする。
すると、彼女の長い髪の一部が、エドモンドの尻の下に敷かれているらしかった。ぴんと張って、オリヴィアは小さな悲鳴を上げる。
「すまない」
エドモンドは腰を上げ、オリヴィアの髪を解放したが、またすぐに座りなおす。
「──が、君のベッドは残念ながらここではない。続き部屋があって、そこに女性用のベッドが用意してある。今夜からそれが君のものだ」
寝起きで、まだ頭がボーっとしていたから、オリヴィアにはエドモンドが何を言っているのかいまいち掴みきれなかった。
「それは……」まどろんだ声で訊ねる。「ノースウッド伯爵もそのベッドで眠るということですか? たった今このベッドで休みましたが、とても快適だったと思います。二人でも充分な大きさですわ。変える必要は、ない気がするのですけど……」
「違う、マダム、私はここ、そして君はその続き部屋で眠る」
「は?」
「私たちは床を共にしない。少なくとも、しばらくの間は」
よく意味が分からなくて、オリヴィアは大きな瞳を瞬いた。
という声が上の方からして、オリヴィアはゆっくりと瞳を開けた。
「起きなさい。ここでは何でもかんでも召使がやってくれるわけではない。顔を洗って着替えをするくらい、自分で済ませてくれると助かる」
「……え……」
ぱちりと目を見開く。
すると、着の身着のままベッドに横たわったオリヴィアのすぐそばに、エドモンドが腰掛けていた。
二人分の重さでベッドがぎしりと音を立てる。オリヴィアは何度か大きな瞬きを繰り返した。
「私……」
「眠っていたようだ。疲れているのはわかるが、だったら下の食事を断るなり、風呂を用意させるなりさせるべきだろう。君はここの女主人になったのだから」
エドモンドは、法律文でも並び立てるような平淡さで、目を覚ましたばかりの新妻に諭し始めた。
オリヴィアはゆっくり起き上がろうとする。
すると、彼女の長い髪の一部が、エドモンドの尻の下に敷かれているらしかった。ぴんと張って、オリヴィアは小さな悲鳴を上げる。
「すまない」
エドモンドは腰を上げ、オリヴィアの髪を解放したが、またすぐに座りなおす。
「──が、君のベッドは残念ながらここではない。続き部屋があって、そこに女性用のベッドが用意してある。今夜からそれが君のものだ」
寝起きで、まだ頭がボーっとしていたから、オリヴィアにはエドモンドが何を言っているのかいまいち掴みきれなかった。
「それは……」まどろんだ声で訊ねる。「ノースウッド伯爵もそのベッドで眠るということですか? たった今このベッドで休みましたが、とても快適だったと思います。二人でも充分な大きさですわ。変える必要は、ない気がするのですけど……」
「違う、マダム、私はここ、そして君はその続き部屋で眠る」
「は?」
「私たちは床を共にしない。少なくとも、しばらくの間は」
よく意味が分からなくて、オリヴィアは大きな瞳を瞬いた。


