ヒューバート・ファレルは何時間でも全身鏡と向かい合って、自分が最も魅力的に見える仕草をたんねんに調べるような伊達男であったが、そこには理由があった。
彼には、宿敵と見なす相手がいたからだ。
彼はその宿敵に長いこと競争心を抱いていて、事あるごとに自分が優位に立てる機会を注意深くうかがっている。たとえば有力者の集まる社交の場や、華やかな舞踏会などで、どれだけ自分の方が洗練されていて資産が豊かであるか、主張するのを怠らなかった。
たいてい、彼はそういった機会を自ら作り出す必要があった。
腹立たしいことに、彼の宿敵はヒューバートを器用に避けているのだ。『奴』が出席すると聞いた集まりに、ヒューバートが贅の限りをつくした豪華な服ではりきって行ってみれば、『奴』は集まりそのものをすっぽかし、なんと、柵を壊して逃げた雄牛の群れを追いに行ったりしていた。
「ノースウッド伯爵は領地の管理にとても熱心でいらっしゃるようだ」
と、ある、ヒューバートとファレル家がたいそう世話になっている中央の有力者が感心したようすで言った。
「領民のために自ら雄牛を追うとは、なんと型破りな! しかし、なかなか骨のあるいい男のようだ。ぜひとも紹介していただきたいものですな」
流行の、足がほっそり見える形のズボンを着込んだファレルは、なんとも居心地の悪く肩身の狭い、屈辱的な気分を味わされたものだった。しかしこれも、長年の鬱憤の一部でしかない。
ヒューバートと『奴』は長い間比べられ続けてきた。
ノースウッド伯爵とサウスウッド伯爵、その相反する立場からして、彼らの確執はすでに遠い昔から運命付けられていたのだ。きっと。


