人込みをかき分けてマーガレットの側にやって来たローナンは、彼女の隣に立つと興味深く様子をうかがった。
お目の高い仕立て屋の女主人がオリヴィアに対してどんな感想を持つのか、知りたかったのだ。
「ノースウッド伯爵は今すぐマダムを連れて帰って、ベッドに押し戻したくて苛々していらっしゃるのね」
日焼けを避けるためツバの広い帽子を被っているマーガレットは、その下から好奇心旺盛な瞳をきらりと輝かせながら、ささやいた。
「──子供でもそれくらい分かってしまうわ。街人に紹介するのさえ我慢ならないようね」
「そうだろうね。もし僕が夫だったら、オリヴィアみたいなのは箱に入れて鍵を閉めてしまっておくよ」
「そういう殿方は多いわ」
マーガレットはちらりと視線を上げた。
エドモンドと並ぶと少し線の細い印象のあるローナンだが、こうして婦人の隣に立ち、その長身をぴんと伸ばして腕を組んでいると、中々絵になる男らしい風情だ。
マーガレットは賞賛の笑みを洩らす。
昔からそうだ、とマーガレットは思った。バレット家の男たちは代々とても魅力的だ。
「ピートはお元気かしら?」
伯爵夫妻に視線を戻したマーガレットは、平静を装った声でバレット家の老執事についてローナンに尋ねた。ローナンは肩をすくめる。
「あの年にしては元気なんじゃないかな。相変わらずふらりといなくなることが多いから、あんまり屋敷にはいないよ。時々帰ってくるとオリヴィアにちょっかいを出してるけど」
「目に浮かぶようね」
「気になるかい?」
「いいえ!」
マーガレットは声を上げた。「お店に来る婦人方にバレット家の話題はとても人気があるのよ。だから知りたいだけだわ!」
再び肩をすくめたローナンは特に皮肉を返すわけでもなく、納得したようにうなづいてみせた。
恋は人を落とす。
どこか深い深いところへ。
お目の高い仕立て屋の女主人がオリヴィアに対してどんな感想を持つのか、知りたかったのだ。
「ノースウッド伯爵は今すぐマダムを連れて帰って、ベッドに押し戻したくて苛々していらっしゃるのね」
日焼けを避けるためツバの広い帽子を被っているマーガレットは、その下から好奇心旺盛な瞳をきらりと輝かせながら、ささやいた。
「──子供でもそれくらい分かってしまうわ。街人に紹介するのさえ我慢ならないようね」
「そうだろうね。もし僕が夫だったら、オリヴィアみたいなのは箱に入れて鍵を閉めてしまっておくよ」
「そういう殿方は多いわ」
マーガレットはちらりと視線を上げた。
エドモンドと並ぶと少し線の細い印象のあるローナンだが、こうして婦人の隣に立ち、その長身をぴんと伸ばして腕を組んでいると、中々絵になる男らしい風情だ。
マーガレットは賞賛の笑みを洩らす。
昔からそうだ、とマーガレットは思った。バレット家の男たちは代々とても魅力的だ。
「ピートはお元気かしら?」
伯爵夫妻に視線を戻したマーガレットは、平静を装った声でバレット家の老執事についてローナンに尋ねた。ローナンは肩をすくめる。
「あの年にしては元気なんじゃないかな。相変わらずふらりといなくなることが多いから、あんまり屋敷にはいないよ。時々帰ってくるとオリヴィアにちょっかいを出してるけど」
「目に浮かぶようね」
「気になるかい?」
「いいえ!」
マーガレットは声を上げた。「お店に来る婦人方にバレット家の話題はとても人気があるのよ。だから知りたいだけだわ!」
再び肩をすくめたローナンは特に皮肉を返すわけでもなく、納得したようにうなづいてみせた。
恋は人を落とす。
どこか深い深いところへ。


