エドモンドは持てる限りの全ての自制心を総動員すると、オリヴィアの側にひざまずき、彼女を頭からすっぽりと抱いて、ゆっくり髪をなでた。
「よし、よし、大丈夫だ」
オリヴィアの身体は温かくて気持ちがよかった。
まるで焼きたてのパンのように柔らかくて、うっとりとするような甘い香りがする。「傷を見せてごらん、オリヴィア。痛くはしないから」
すると、オリヴィアはエドモンドの言うとおりにした。
小さな顔を上げて、つんとおでこを突き出すと、じっと彼を見つめる。
傷はたいしたことはなかった。
少し赤くなっているだけで、もしこれが自分についた怪我なら、エドモンドは怪我とさえ呼ばなかっただろう。しかしそれがオリヴィアの肌についたとなると、ひどく心が痛んだ。
エドモンドはオリヴィアの顔に張り付いたほつれ毛を両手で払うと、泣きそうな顔をしているオリヴィアを覗き込んで、しばらく見つめた。
オリヴィアの泣き顔。
彼女の笑顔はエドモンドの存在を鷲掴みにしたが、泣き顔は……彼の心を粉々にした。床に落ちたポーセリンのように無残に。どんな修復師も直せないくらい散々に。
足場の悪い道に差しかかったのか、馬車は相変わらず揺れ続けていたが、エドモンドはこれ以上オリヴィアに怪我をさせるつもりはなかった。
両腕を使ってぎゅっと華奢な全身を包むと、そのままゆっくりと抱き上げ、席に座らせる。
オリヴィアは潤んだ瞳でエドモンドを見上げ続けていた。
「オリヴィア。本当に街に行きたいのなら、戻る必要はない。服を作りたいのなら、いくらでも注文すればいい……ただ今度は、もう少し肌の隠れるものにしてもらえると助かるが」
今度はエドモンドが敗北を認める番だった。
馬車は走り続けた。
「よし、よし、大丈夫だ」
オリヴィアの身体は温かくて気持ちがよかった。
まるで焼きたてのパンのように柔らかくて、うっとりとするような甘い香りがする。「傷を見せてごらん、オリヴィア。痛くはしないから」
すると、オリヴィアはエドモンドの言うとおりにした。
小さな顔を上げて、つんとおでこを突き出すと、じっと彼を見つめる。
傷はたいしたことはなかった。
少し赤くなっているだけで、もしこれが自分についた怪我なら、エドモンドは怪我とさえ呼ばなかっただろう。しかしそれがオリヴィアの肌についたとなると、ひどく心が痛んだ。
エドモンドはオリヴィアの顔に張り付いたほつれ毛を両手で払うと、泣きそうな顔をしているオリヴィアを覗き込んで、しばらく見つめた。
オリヴィアの泣き顔。
彼女の笑顔はエドモンドの存在を鷲掴みにしたが、泣き顔は……彼の心を粉々にした。床に落ちたポーセリンのように無残に。どんな修復師も直せないくらい散々に。
足場の悪い道に差しかかったのか、馬車は相変わらず揺れ続けていたが、エドモンドはこれ以上オリヴィアに怪我をさせるつもりはなかった。
両腕を使ってぎゅっと華奢な全身を包むと、そのままゆっくりと抱き上げ、席に座らせる。
オリヴィアは潤んだ瞳でエドモンドを見上げ続けていた。
「オリヴィア。本当に街に行きたいのなら、戻る必要はない。服を作りたいのなら、いくらでも注文すればいい……ただ今度は、もう少し肌の隠れるものにしてもらえると助かるが」
今度はエドモンドが敗北を認める番だった。
馬車は走り続けた。


