「どうして……そんな顔をするんですか、ノースウッド伯爵?」
オリヴィアは聞いた。
「あなたには想像もつかないだろう、マダム」
エドモンドは答えた。
たしかにオリヴィアにはエドモンドの心が読めなかった。でも昨々夜、バレット家の呪いについて話してくれた時の彼を覚えている。
彼は、人一倍自分に厳しい人間だ。
あまり人に弱みを見せようとしない男でもある。そんな彼が悲しみの片鱗を見せるのは、本当につらい時だけのはずだ。
オリヴィアは自分のドレスに今一度視線を落とし、しばらくきゅっと唇を結んで押し黙った。
「……この服がお気に召さないなら、すぐに着替えます。ローナンに頼んで屋敷に戻ってもらいましょう」
オリヴィアは小声で敗北を認めて、馬車の中で立ち上がろうとした。
するとその時、急に馬車が大きく縦に揺れて、オリヴィアの身体が座席から前へ弾かれるように飛んだ。エドモンドはすぐに立ち上がったが、さすがに間に合わず、オリヴィアはゴンと壁におでこをぶつけて正面の席に倒れこみ、そのままずるずると床に落ちた。
「っ、ご、ごめんなさ……」
目に涙を溜めて馬車の床に座り込んだオリヴィアを見て、エドモンドは心の中で毒づいた。
(くそ、だからこの娘は……)
もっと強情な女だったら、突き放せたかもしれないのに。
こんなに美しくなかったら、背を向けられたかもしれないのに。
しかしオリヴィアはか弱く、やわらかく、そして目を離せないほど綺麗だった。ちくしょう、どうして怪我なんてするんだ。全部、私のせいじゃないか!
オリヴィアは聞いた。
「あなたには想像もつかないだろう、マダム」
エドモンドは答えた。
たしかにオリヴィアにはエドモンドの心が読めなかった。でも昨々夜、バレット家の呪いについて話してくれた時の彼を覚えている。
彼は、人一倍自分に厳しい人間だ。
あまり人に弱みを見せようとしない男でもある。そんな彼が悲しみの片鱗を見せるのは、本当につらい時だけのはずだ。
オリヴィアは自分のドレスに今一度視線を落とし、しばらくきゅっと唇を結んで押し黙った。
「……この服がお気に召さないなら、すぐに着替えます。ローナンに頼んで屋敷に戻ってもらいましょう」
オリヴィアは小声で敗北を認めて、馬車の中で立ち上がろうとした。
するとその時、急に馬車が大きく縦に揺れて、オリヴィアの身体が座席から前へ弾かれるように飛んだ。エドモンドはすぐに立ち上がったが、さすがに間に合わず、オリヴィアはゴンと壁におでこをぶつけて正面の席に倒れこみ、そのままずるずると床に落ちた。
「っ、ご、ごめんなさ……」
目に涙を溜めて馬車の床に座り込んだオリヴィアを見て、エドモンドは心の中で毒づいた。
(くそ、だからこの娘は……)
もっと強情な女だったら、突き放せたかもしれないのに。
こんなに美しくなかったら、背を向けられたかもしれないのに。
しかしオリヴィアはか弱く、やわらかく、そして目を離せないほど綺麗だった。ちくしょう、どうして怪我なんてするんだ。全部、私のせいじゃないか!


