Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

「ジェフもマシューも、シェリーも私によく似ている。本能に忠実で、欲しいものをよく分かっている。そしてそれを得るための努力を惜しまない」
 父は言った。「しかしお前はなんだ、オリヴィア。毎日毎日、家と庭の往復ばかり。いつまで経っても童女のように無邪気なままだ」

 それどころか、シェリーは童女のころから将来の旦那探しに精を出していたぞ、と戒めを加える。

 父は猛烈実業家で、仕事の鬼で、その腕一つでオリヴィアが住んでいた豪邸を築き上げた成り上がりだった。そして、それを自分で誇っていた。
 たとえどこの誰がどう眉を潜めようとも。

 オリヴィアだって、そんな父を尊敬すると共に愛していた。

 しかし、生まれ持った性質ばかりはどうにもならない──オリヴィアは父の言うとおり、まったく野心のないお嬢様だった。
 シェリーのように自ら「狩り」に出ることはまずなく、ただにっこりと微笑みながら誰かが何かを与えてくれるのを待っている。

 自由に愛に生きるシェリーを、頭の固い連中はふしだらだと非難するが、サー・ジギー・リッチモンドにとっては、彼女こそがお気に入りの娘なのだ。逆にオリヴィアは、輝かしい兄妹の中の黒い斑点だった。
 立派な大木に生えたきのこ。
 純白のミルクに入ったハエ……。

(ひ、卑屈にならない……っ)
 だからオリヴィアは、勝手に決められた結婚ではあったけれど、父の望んだ相手であるし、新しい愛情のある家庭を築く機会として快くエドモンド・バレットを受け入れたのだ。

 エドモンドがオリヴィアを受け入れた理由は分からないが、多分持参金が絡んでいるのだろうと、その程度の予測はできた。屋敷を見た今、それはほぼ確信となっている。
 しかし、である。