馬車は相変わらずのんびりとした調子で進んでいて、時々、車輪が小石の上に乗ったり小さな溝に落ちたりして揺れる以外、順調な走りだった。
オリヴィアの言うとおり天気のいい日で、閉め切った馬車内は蒸し暑く感じるほどだ。しかし、エドモンドの額ににじんでいる汗は、暑さのせいではない。
エドモンドとオリヴィアは向かい合って座っていた。
四人が向き合って座れる形の馬車だったから、いくらかの距離はあったものの、それでもお互いの呼吸を感じられるほどの近さには変わりない。
オリヴィアは暑さと羞恥とで肌を赤く火照らせて、壁の方へにじり寄った。
裸同然と言ったエドモンドの台詞には明らかな棘があったし、オリヴィアが始めた天候についての会話を引き継ぐ気がないのは明らかだった。
エドモンドはひどく怒っているように見えた──それは、とても理不尽なことだ。
つい昨々夜、愛人を作っていいとさえほのめかしたのは彼なのに。
それに敬愛する姉のドレスを悪く言われたのも嫌だった。
「お言葉ですけど……ノースウッド伯爵、このドレスは裸同然なんていう下品なものとは違います。姉のものだったのよ。少し大胆なだけです」
「では言い直そう。その少し大胆なドレスで私の弟にからみついて、何をするつもりだ?」
「からみついてなんていません! 彼は……っ」
オリヴィアは声を上げた。
「彼は私を慰めてくれているだけです! 夫にかまってもらえない可哀想な義理の姉を、散歩がてらに仕立て屋に連れて行ってくれるだけだわ!」
言い終わるとオリヴィアはなんだか急に悲しくなって、ついにエドモンドから顔をそらすと、ぷいと小窓の方を向いた。
しかし、エドモンドが肩を落とすのが目の端に見えて、思わず視線を戻した。
エドモンドは怒りと悲しみがごちゃ混ぜになったような顔をしていた。
オリヴィアの言うとおり天気のいい日で、閉め切った馬車内は蒸し暑く感じるほどだ。しかし、エドモンドの額ににじんでいる汗は、暑さのせいではない。
エドモンドとオリヴィアは向かい合って座っていた。
四人が向き合って座れる形の馬車だったから、いくらかの距離はあったものの、それでもお互いの呼吸を感じられるほどの近さには変わりない。
オリヴィアは暑さと羞恥とで肌を赤く火照らせて、壁の方へにじり寄った。
裸同然と言ったエドモンドの台詞には明らかな棘があったし、オリヴィアが始めた天候についての会話を引き継ぐ気がないのは明らかだった。
エドモンドはひどく怒っているように見えた──それは、とても理不尽なことだ。
つい昨々夜、愛人を作っていいとさえほのめかしたのは彼なのに。
それに敬愛する姉のドレスを悪く言われたのも嫌だった。
「お言葉ですけど……ノースウッド伯爵、このドレスは裸同然なんていう下品なものとは違います。姉のものだったのよ。少し大胆なだけです」
「では言い直そう。その少し大胆なドレスで私の弟にからみついて、何をするつもりだ?」
「からみついてなんていません! 彼は……っ」
オリヴィアは声を上げた。
「彼は私を慰めてくれているだけです! 夫にかまってもらえない可哀想な義理の姉を、散歩がてらに仕立て屋に連れて行ってくれるだけだわ!」
言い終わるとオリヴィアはなんだか急に悲しくなって、ついにエドモンドから顔をそらすと、ぷいと小窓の方を向いた。
しかし、エドモンドが肩を落とすのが目の端に見えて、思わず視線を戻した。
エドモンドは怒りと悲しみがごちゃ混ぜになったような顔をしていた。


