*
久しぶりの外出だというのに、オリヴィアの気は滅入るばかりだ。
ジョーが玄関先に馬車を用意しているのをぼんやりと眺めながら、オリヴィアは勝利よりも敗北を感じて肩を落としていた。
──好きにすればいいさ。
投げ捨てるようなエドモンドの声が、何度も何度も繰り返し思い出される。
繊細なレースの重なったドレスに目を落とし、自分の格好を確認した。シェリーが着ていた時はあんなに妖艶でエレガントに見えたドレスなのに、オリヴィアが着るとその十分の一の艶やかさもないように思えた。胸は窮屈ではみ出してしまいそうだし、腰の部分は少し余っている。
持ち衣装の中で一番女性らしいものを選んだつもりだったのに。
少しは、エドモンドに、魅力的だと思ってもらえるかもしれないと思っていたのに。
「義姉さん」
と、後ろからローナンの声がして、オリヴィアは振り返った。
外出着に着替えたハンサムな義理の弟が、玄関から軽快な足取りでこちらへ向かってくるところだった。
落ち込んでいる彼女とは対照的に、ローナンは晴れ晴れしい顔をしている。
「ローナン……残念だけど、あなたの計画は上手くいっていないと思うわ。彼はまったく私に関心を示さなかったもの」
オリヴィアは眉を下げながら言った。
「ところが、僕は大成功だと思ってる。兄さんは今頃、君のことで頭がいっぱいで、たとえ空から大量の牛ガエルが降ってきても気がつかないだろうね」
「あなたがそう思った理由を教えて欲しいわ、ローナン」
「一つ一つ上げていたらきりがないほど教えてあげられるよ、オリヴィア。さあ、まずは馬車に乗って。それにしても、そんなに素敵な服をどこに隠してたんだい?」
最後の質問には答えずに、オリヴィアはエスコートされるまま馬車に近寄った。
オリヴィアを間近にした小姓・ジョーは、急に顔を真っ赤にさせて、あう、あう、と溺れる犬のように喘いだあと、大疾走で厩舎のほうへ逃げていった。
「ほらね」
オリヴィアは諦めの口調で言った。
「ほらね」
ローナンはさも楽しそうに言った。
久しぶりの外出だというのに、オリヴィアの気は滅入るばかりだ。
ジョーが玄関先に馬車を用意しているのをぼんやりと眺めながら、オリヴィアは勝利よりも敗北を感じて肩を落としていた。
──好きにすればいいさ。
投げ捨てるようなエドモンドの声が、何度も何度も繰り返し思い出される。
繊細なレースの重なったドレスに目を落とし、自分の格好を確認した。シェリーが着ていた時はあんなに妖艶でエレガントに見えたドレスなのに、オリヴィアが着るとその十分の一の艶やかさもないように思えた。胸は窮屈ではみ出してしまいそうだし、腰の部分は少し余っている。
持ち衣装の中で一番女性らしいものを選んだつもりだったのに。
少しは、エドモンドに、魅力的だと思ってもらえるかもしれないと思っていたのに。
「義姉さん」
と、後ろからローナンの声がして、オリヴィアは振り返った。
外出着に着替えたハンサムな義理の弟が、玄関から軽快な足取りでこちらへ向かってくるところだった。
落ち込んでいる彼女とは対照的に、ローナンは晴れ晴れしい顔をしている。
「ローナン……残念だけど、あなたの計画は上手くいっていないと思うわ。彼はまったく私に関心を示さなかったもの」
オリヴィアは眉を下げながら言った。
「ところが、僕は大成功だと思ってる。兄さんは今頃、君のことで頭がいっぱいで、たとえ空から大量の牛ガエルが降ってきても気がつかないだろうね」
「あなたがそう思った理由を教えて欲しいわ、ローナン」
「一つ一つ上げていたらきりがないほど教えてあげられるよ、オリヴィア。さあ、まずは馬車に乗って。それにしても、そんなに素敵な服をどこに隠してたんだい?」
最後の質問には答えずに、オリヴィアはエスコートされるまま馬車に近寄った。
オリヴィアを間近にした小姓・ジョーは、急に顔を真っ赤にさせて、あう、あう、と溺れる犬のように喘いだあと、大疾走で厩舎のほうへ逃げていった。
「ほらね」
オリヴィアは諦めの口調で言った。
「ほらね」
ローナンはさも楽しそうに言った。


