「マダム、そのはしたない格好は何だ」
敵を前にうなる野犬のような声で、エドモンドは食ってかかった。「屋敷をうろうろするような格好ではないだろう。裏庭に娼館を開いて客を取るというなら話は別だが」
「いいじゃないか。素敵だよ。うちは女気が足りないからさ、このくらいの方が華やかになっていいだろう?」
オリヴィアに代わって、ローナンが答えた。
オリヴィアは内心、このままエドモンドの足元にひざまずいて平謝りをして、全てをなかったことにしたい誘惑と戦わなければならなかったが──明るくローナンの言葉に相づちをうった。
「ローナンの言うとおりです、ノースウッド伯爵。お堅いことは言わないでください。今日は朝の仕事が終わったら、私、街に出てみようと思うんです」
「街?」
エドモンドはこれ以上ありえないほど深く眉間に皺を立てた。
オリヴィアは早口に説明する。
「ウッドヴィルです。素敵な仕立て屋があるとローナンに聞きました。天気もいいし、面白そうでしょう? 領地を見て回るのも大切だと思って」
「それと、その布の足りないドレスと、何の関係がある」
「大ありです! 修道女みたいな格好で街に出たくないわ。これは首都で流行っているドレスの形なんです」
オリヴィアは嘘をついた。
正確には、嘘ではなかったが、これは昼間に街へ外出するための種類のドレスではなく、ごく親密な集まりなどに着て行くためのものだ。元は姉シェリーの持ち物だったが、あまりにレース使いが見事で感心していたところ、衣装もちの姉がオリヴィアにこのドレスを譲ったのだ。オリヴィアが自ら買い求めたりする種類のドレスではない。
それがまさか、こんなところで役に立つとは思ってもみなかったけれど。
敵を前にうなる野犬のような声で、エドモンドは食ってかかった。「屋敷をうろうろするような格好ではないだろう。裏庭に娼館を開いて客を取るというなら話は別だが」
「いいじゃないか。素敵だよ。うちは女気が足りないからさ、このくらいの方が華やかになっていいだろう?」
オリヴィアに代わって、ローナンが答えた。
オリヴィアは内心、このままエドモンドの足元にひざまずいて平謝りをして、全てをなかったことにしたい誘惑と戦わなければならなかったが──明るくローナンの言葉に相づちをうった。
「ローナンの言うとおりです、ノースウッド伯爵。お堅いことは言わないでください。今日は朝の仕事が終わったら、私、街に出てみようと思うんです」
「街?」
エドモンドはこれ以上ありえないほど深く眉間に皺を立てた。
オリヴィアは早口に説明する。
「ウッドヴィルです。素敵な仕立て屋があるとローナンに聞きました。天気もいいし、面白そうでしょう? 領地を見て回るのも大切だと思って」
「それと、その布の足りないドレスと、何の関係がある」
「大ありです! 修道女みたいな格好で街に出たくないわ。これは首都で流行っているドレスの形なんです」
オリヴィアは嘘をついた。
正確には、嘘ではなかったが、これは昼間に街へ外出するための種類のドレスではなく、ごく親密な集まりなどに着て行くためのものだ。元は姉シェリーの持ち物だったが、あまりにレース使いが見事で感心していたところ、衣装もちの姉がオリヴィアにこのドレスを譲ったのだ。オリヴィアが自ら買い求めたりする種類のドレスではない。
それがまさか、こんなところで役に立つとは思ってもみなかったけれど。


