Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 翌々朝、眩しい朝日のプリズムが瞼の上で踊っているのを感じて、オリヴィアは目を覚ました。
 カーテンの隙間から漏れる白い日の光が肌寒い朝の寝室を照らし、少しずつ空気を温めているところのようだった。本格的な初夏の訪れを待つノースウッドは、今、最も瑞々しい季節を迎えている。

 オリヴィアは何度か瞬きを繰り返して光に瞳を慣らすと、ベッドの中で機嫌よく手足を伸ばした。
 ころりと寝返りをうって横向きになり、シーツの下の体温の名残りをむさぼりながら、静かに耳を澄ます。

 ──下階からマギーの声が聞こえてきた。

 何か、どこの片付けがなっていないとか、そんな文句を言いながらバタバタと忙しく歩き回っている。さらに耳を澄ますと、わずかながら、エドモンドとローナンの声も聞こえてきた。

(皆、もう起きているのね)

 オリヴィアはのろのろと身体を起こし、ベッドサイドに足を下ろして座ると目を閉じた。
 そして爽やかな朝の空気を胸いっぱいに吸い込んでから、再び目を開けた。

 新しい朝が来た。
 さあ、立ち上がって。
 空に光があるのが、見えるでしょう。