口調はいつもどおり優しかったが、きっとローナンは真剣だ。
なんとなくそれが分かったから、オリヴィアはきゅっとスカートの裾を掴み、ゆっくりと言葉を選びながら答えた。
「悲しいと思いました。ノースウッド伯爵はとても傷付いた顔をしていて……私の存在がそれを増長しているみたいで、苦しくて……」
それは、無意識に出た台詞だったが、ローナンは的を射たとばかりに頷いた。
「そうだね、義姉上。理由は分かってる?」
「? お母さまやモニカが亡くなったからでしょう?」
「違う。君の存在が兄上の辛さを増長している件について、さ」
「それは──」
オリヴィアは考えながら首を傾げた。「それは、ノースウッド伯爵が……優しいから」
「君のことを好きだから。少なくとも、憎からず思っているから、だろ」
オリヴィアは両目を瞬いた。
──なぜかそういう理論に辿り着かなかった。エドモンドがオリヴィアを好きだなんて、奇跡みたいなもので、そう簡単には起こらないと思い込んでいたからだ。
でも……?
言葉を失ったオリヴィアは呆然と立ち尽くしていた。
ローナンは彼独特の穏かでいて隙のない動きで、数歩、彼女に近付く。
夜間の廊下は薄暗く、使用人や小作人もほとんど引き下がっているのだろう、ひと気はほとんどなかった。
「僕は呪いを信じていない。でも、兄さんがそれを心配する気持ちも、その理由も、よく分かる。だから最初に君に聞かなくちゃいけない──もし逃げたいのなら、逃げていいんだよ」
なんとなくそれが分かったから、オリヴィアはきゅっとスカートの裾を掴み、ゆっくりと言葉を選びながら答えた。
「悲しいと思いました。ノースウッド伯爵はとても傷付いた顔をしていて……私の存在がそれを増長しているみたいで、苦しくて……」
それは、無意識に出た台詞だったが、ローナンは的を射たとばかりに頷いた。
「そうだね、義姉上。理由は分かってる?」
「? お母さまやモニカが亡くなったからでしょう?」
「違う。君の存在が兄上の辛さを増長している件について、さ」
「それは──」
オリヴィアは考えながら首を傾げた。「それは、ノースウッド伯爵が……優しいから」
「君のことを好きだから。少なくとも、憎からず思っているから、だろ」
オリヴィアは両目を瞬いた。
──なぜかそういう理論に辿り着かなかった。エドモンドがオリヴィアを好きだなんて、奇跡みたいなもので、そう簡単には起こらないと思い込んでいたからだ。
でも……?
言葉を失ったオリヴィアは呆然と立ち尽くしていた。
ローナンは彼独特の穏かでいて隙のない動きで、数歩、彼女に近付く。
夜間の廊下は薄暗く、使用人や小作人もほとんど引き下がっているのだろう、ひと気はほとんどなかった。
「僕は呪いを信じていない。でも、兄さんがそれを心配する気持ちも、その理由も、よく分かる。だから最初に君に聞かなくちゃいけない──もし逃げたいのなら、逃げていいんだよ」


