オリヴィアはごくりと息を呑んだ。
──顔を上げ、エドモンドを見つめると、彼の瞳がオリヴィアからの答えを求めているのが分かる。
覚悟を秘めた、毅然とした瞳だった。
そして同時に、深い深い悲しみの海がその中に横たわっている、儚い瞳だ。オリヴィアは何もかもをも脱ぎ捨てて、その海の中に飛び込んでいく自分を想像した。
彼の孤独を癒す自分を。
彼の悲しい過去を覆す自分を。
誰かが彼を救わなければならないのだろう──そして、その誰かとは、多分、自分なのだ。
「お話は分かりました、ノースウッド伯爵」
オリヴィアは言った。「……でも、私があなたの妻になりたいという願いは、変わりません」
エドモンドは首を横に振る。
「いいや、あなたは分かっていない。まったくもって分かっていない。それとも私のことを頭の狂った偏屈だとでも思っているのか、どちらかだ」
「た、たしかに、少し頑固な面があるとは思いますけど……」
オリヴィアが遠慮がちに続けると、エドモンドは少し片眉を上げた。
「狂っているなんて思ったことはありません。きっと、少し慎重すぎるだけなんだわ」
「慎重? 私は家畜のウサギの話をしているんじゃない、オリヴィア。あなたの命の話をしているんだ。これほど悲劇が重なった上に、さらに危険を冒すことが、『慎重すぎる』で片付けられるものか」
「でも、まだ分かりません」
「分かった後では遅い」
「私には、賭けてみる価値があります」
オリヴィアがきっぱりと言い切ると、エドモンドは信じられないという風な顔でオリヴィアを見つめ返した。今さらだが、彼の彫りの深い顔つきは、真剣な表情になるとえも言われぬ迫力が放たれる。
しかしここで怯んではいけない。
きゅっと拳を握ったオリヴィアは、彼から目を逸らすまいと自分を叱咤しながら、顔を高く上げて言った。
「あなたに愛されることが。あなたと家族を作ることが……私には、命を賭けてみるだけの価値があります」
──顔を上げ、エドモンドを見つめると、彼の瞳がオリヴィアからの答えを求めているのが分かる。
覚悟を秘めた、毅然とした瞳だった。
そして同時に、深い深い悲しみの海がその中に横たわっている、儚い瞳だ。オリヴィアは何もかもをも脱ぎ捨てて、その海の中に飛び込んでいく自分を想像した。
彼の孤独を癒す自分を。
彼の悲しい過去を覆す自分を。
誰かが彼を救わなければならないのだろう──そして、その誰かとは、多分、自分なのだ。
「お話は分かりました、ノースウッド伯爵」
オリヴィアは言った。「……でも、私があなたの妻になりたいという願いは、変わりません」
エドモンドは首を横に振る。
「いいや、あなたは分かっていない。まったくもって分かっていない。それとも私のことを頭の狂った偏屈だとでも思っているのか、どちらかだ」
「た、たしかに、少し頑固な面があるとは思いますけど……」
オリヴィアが遠慮がちに続けると、エドモンドは少し片眉を上げた。
「狂っているなんて思ったことはありません。きっと、少し慎重すぎるだけなんだわ」
「慎重? 私は家畜のウサギの話をしているんじゃない、オリヴィア。あなたの命の話をしているんだ。これほど悲劇が重なった上に、さらに危険を冒すことが、『慎重すぎる』で片付けられるものか」
「でも、まだ分かりません」
「分かった後では遅い」
「私には、賭けてみる価値があります」
オリヴィアがきっぱりと言い切ると、エドモンドは信じられないという風な顔でオリヴィアを見つめ返した。今さらだが、彼の彫りの深い顔つきは、真剣な表情になるとえも言われぬ迫力が放たれる。
しかしここで怯んではいけない。
きゅっと拳を握ったオリヴィアは、彼から目を逸らすまいと自分を叱咤しながら、顔を高く上げて言った。
「あなたに愛されることが。あなたと家族を作ることが……私には、命を賭けてみるだけの価値があります」


