Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 オリヴィアは生き延びるために、またこくこくとうなずいた。老執事は満足げに胸を反らすとオリヴィアに背を向け、それは威風堂々とエントランスから出て行った。
 がははという高笑いが木霊(こだま)してきた。

「申し訳ありません……」
 と謝ったのは、オリヴィアの後ろに付いていた小姓ジョーだ。「ピートの旦那は、あんなですけど、いい人です。執事としても有能なんですよ」
「そ、そう」
 曖昧に答えながら、オリヴィアは思った。

 ここは首都から馬で三日分離れた僻地だ。きっと執事という単語に別の意味があるのだろう。あとで言葉を習い直さないといけないかもしれない。

「さあ、お部屋に案内しますよ。お着替えになって、用意ができたら呼んでください。食堂に軽食の準備ができていますから」
「助かるわ、ジョー。ありがとう」
 オリヴィアはなかば、ぐったりとしながら答えた。