しかし、オリヴィアは、自分の気持ちを心の中だけに留めておくのが苦手だ。
「ノースウッド伯爵……」
思ったことは口にしたい。
伝えるべき言葉は、すぐに届けたい。だから今回も、彼女は自分の心に従ってとつとつと喋りはじめた。
「助けてくださって本当にありがとうございます。もしノースウッド伯爵が来てくださらなかったら、私は今頃、窓から落ちて死んでしまっていたところだろうと皆に言われました」
エドモンドは何も口を挟まなかったので、オリヴィアは一息つくと続けた。
「でも」
オリヴィアは自分の胸に手を置く。「あなたに褒めて欲しくて。あなたに認めてほしくて、大きなことをしてみたいと思っただけなんです。本当にごめんなさい」
「もういい」
「許してくださいますか?」
「二度と同じ真似はしないと誓うなら」
「誓います。もう二度と三つ重ねた椅子の上に乗ったりしません、と」
「三つでも二つでも駄目だ。一つでも……できれば謹んで欲しいところだが」
思いのほか饒舌なエドモンドに気分が軽くなったオリヴィアは、この最後の台詞にも素直にうなづいた。
「分かりました。もう椅子には乗りません。そもそも、座るものですものね」
「いいだろう」
相変わらず、エドモンドは天井のどこか一点を睨んだままでオリヴィアの方を振り返らなかったけれど、その口調は優しかった。
少なくともオリヴィアには優しく感じられた。
心が温かくなると同時に、目の前の、少なくとも法的には自分の夫である男が、たまらなく愛しく……思いやるべき存在に思えてくる。
オリヴィアは穏かに微笑んでいた。
「ノースウッド伯爵……」
思ったことは口にしたい。
伝えるべき言葉は、すぐに届けたい。だから今回も、彼女は自分の心に従ってとつとつと喋りはじめた。
「助けてくださって本当にありがとうございます。もしノースウッド伯爵が来てくださらなかったら、私は今頃、窓から落ちて死んでしまっていたところだろうと皆に言われました」
エドモンドは何も口を挟まなかったので、オリヴィアは一息つくと続けた。
「でも」
オリヴィアは自分の胸に手を置く。「あなたに褒めて欲しくて。あなたに認めてほしくて、大きなことをしてみたいと思っただけなんです。本当にごめんなさい」
「もういい」
「許してくださいますか?」
「二度と同じ真似はしないと誓うなら」
「誓います。もう二度と三つ重ねた椅子の上に乗ったりしません、と」
「三つでも二つでも駄目だ。一つでも……できれば謹んで欲しいところだが」
思いのほか饒舌なエドモンドに気分が軽くなったオリヴィアは、この最後の台詞にも素直にうなづいた。
「分かりました。もう椅子には乗りません。そもそも、座るものですものね」
「いいだろう」
相変わらず、エドモンドは天井のどこか一点を睨んだままでオリヴィアの方を振り返らなかったけれど、その口調は優しかった。
少なくともオリヴィアには優しく感じられた。
心が温かくなると同時に、目の前の、少なくとも法的には自分の夫である男が、たまらなく愛しく……思いやるべき存在に思えてくる。
オリヴィアは穏かに微笑んでいた。


