「ノースウッド伯爵……」
オリヴィアはもう一度、小さくささやいた。
すると、腰に回されていた彼の手がゆっくり伸びてきて、オリヴィアの額のあたりを優しくなではじめる。どうしてだろう。得体のしれない歓喜が背筋を上ってくる感覚がして、オリヴィアはさらに身体を震わせた。
「言いなさい」
エドモンドはしゃがれた声で聞いてきた。「一体、何をしようとしていたのか。私が原因なのか? どうしてあんな馬鹿なことをした?」
「私……私はただ……カーテンを」
オリヴィアは答えようとしたが、声が震えてつっかえてしまう。
続きを言うのは容易でなかったから、もしかしたら彼はもう理解してくれたのではないかと期待して、一旦言葉を止めた。しかしエドモンドは納得していなかった。
眉間には深い皺が数本くっきりと浮かび、緑の瞳はさらなる説明を求めて、炎のように揺れている。
オリヴィアは短く息を呑んだ。
「じつは、寝室のカーテンが、汚れていたんです……はずして、綺麗にできるんじゃないかと……思って、それで」
すると、エドモンドは驚いた顔をした。
「カーテン……」
「ええ、カーテンです。上が高いので、椅子を重ねて──」
「──れてしまえ」
「え」
「カーテンなど呪われてしまえ」
「え、え」
「カーテンなど呪われてしまえ!」
エドモンドは二度言った。
彼の真意がよく分からなくて、オリヴィアはぱちぱちと大きな瞳を瞬いた。エドモンドのカーテンに対する呪いはさらに続いた。
「屋敷中のカーテンを燃やしてしまえ。そうすればあなたはもう二度と、先刻のような馬鹿な真似はしなくなる。そうだろう」
「あ、あの」
「くそ、カーテンなど全て呪われろ! 二度とそんな馬鹿な真似をするんじゃない!」
そしてエドモンドは床の上に折り重なったまま、オリヴィアの肢体を強く抱きしめた。
オリヴィアはもう一度、小さくささやいた。
すると、腰に回されていた彼の手がゆっくり伸びてきて、オリヴィアの額のあたりを優しくなではじめる。どうしてだろう。得体のしれない歓喜が背筋を上ってくる感覚がして、オリヴィアはさらに身体を震わせた。
「言いなさい」
エドモンドはしゃがれた声で聞いてきた。「一体、何をしようとしていたのか。私が原因なのか? どうしてあんな馬鹿なことをした?」
「私……私はただ……カーテンを」
オリヴィアは答えようとしたが、声が震えてつっかえてしまう。
続きを言うのは容易でなかったから、もしかしたら彼はもう理解してくれたのではないかと期待して、一旦言葉を止めた。しかしエドモンドは納得していなかった。
眉間には深い皺が数本くっきりと浮かび、緑の瞳はさらなる説明を求めて、炎のように揺れている。
オリヴィアは短く息を呑んだ。
「じつは、寝室のカーテンが、汚れていたんです……はずして、綺麗にできるんじゃないかと……思って、それで」
すると、エドモンドは驚いた顔をした。
「カーテン……」
「ええ、カーテンです。上が高いので、椅子を重ねて──」
「──れてしまえ」
「え」
「カーテンなど呪われてしまえ」
「え、え」
「カーテンなど呪われてしまえ!」
エドモンドは二度言った。
彼の真意がよく分からなくて、オリヴィアはぱちぱちと大きな瞳を瞬いた。エドモンドのカーテンに対する呪いはさらに続いた。
「屋敷中のカーテンを燃やしてしまえ。そうすればあなたはもう二度と、先刻のような馬鹿な真似はしなくなる。そうだろう」
「あ、あの」
「くそ、カーテンなど全て呪われろ! 二度とそんな馬鹿な真似をするんじゃない!」
そしてエドモンドは床の上に折り重なったまま、オリヴィアの肢体を強く抱きしめた。


