Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

「ノ、ノースウッド、伯しゃ……」
 エドモンドの顔色は、真っ青を通り越した濃いむらさき色のようで、古くなった紅茶を思わせるほどだった。オリヴィアは狼狽してさらにもがいたが、エドモンドの太い腕にからめとられて動けなかった。

「神よ」
 エドモンドはオリヴィアを抱いたまま、耳元で低くうなっていた。

「神よ、──……!」

 唸りは途中で低くなりすぎて、オリヴィアには理解できなかった。なにかの祈りのようにも聞こえたし、なにかを呪っているようにも聞こえる。
 なんとか両手で少しばかりエドモンドを押しかえし、恐る恐る彼の顔をのぞきこむと、深い緑の瞳が動揺しているのが分かった。そしてエドモンドは、まだなにかうなり続けたそうに唇を震わせながらも、真剣にオリヴィアを見つめ返している。

 目を逸らすことはできなかった。
 この世界で知るべきすべてのことは、彼の瞳の中にあるのだと、そんな気分にさせられて。