Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 それだけは耐えられない。祖母も母もモニカも失った。
 そのうえオリヴィアまで……?

(駄目だ、それだけは)
 考えるだけで吐き気が込み上げてくる。早く、早く、オリヴィアから離れなければいけない。私は何をしているんだ──。


「お、おい、ありゃあ何だ!」
 小作人の一人が素っ頓狂な声を上げたので、エドモンドはしばし我に返って顔を上げた。

「おい、おい、ありゃあマダムじゃねえのかい! 今に窓から落っこちるぞ!」

 エドモンドは目をむいて、小作人が指差している方を見た。屋敷の二階だ。朝日がガラスに反射していて、すぐには何が起こっているのか分からなかった。
 が──

「オリヴィア!!!」

 エドモンドは大声を上げた。
 自分が、これほど大きな声を出せるとは知らなかった。そのくらい大きな領主の怒声が、朝のノースウッドにこだましたのだった。