Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

「あら、」
 ふと上を見上げて、オリヴィアは声に出して呟いた。
「カーテンが……ずいぶん汚れているのね」

 出窓に掲げられたカーテンの上部が、すっかりほこりをかぶっているのが見えた。
 気になったオリヴィアは、カーテンの裾を掴んでゆさゆさと揺らしてみる。少し、はらはらとほこりが落ちてきたが、綺麗になるのとはほど遠かった。

(…………)
 カーテンとはどうやって掃除するものなのだろう。

 最上部はオリヴィアの身長の二倍ほどの高さになっているから、当然、手を伸ばしたくらいでは届かない。メイドがハタキを使って掃除するのを見たことはあるが、あんな棒で届く高さではなかった。
 解決策を探し周囲を見回したオリヴィアは、ベッドサイドにいい感じの椅子を見つけて、パッと瞳を輝かせた。

(これに乗ればいいんだわ!)

 オリヴィアはさっそくガタガタと椅子を窓際まで引きずってきて、靴を脱ぐと椅子の上に登って手を伸ばしてみた。が、やはり届かない。小さな敗北を感じて、オリヴィアはきゅっと唇を結んだ。

 ──ま、負けない!

 オリヴィアの不屈のリッチモンド家の血が熱く唸りだした。
 再び寝室を見回すと、もう一脚、今度はもう少し小柄な椅子が部屋の隅に置かれていた。

 オリヴィアの脳裏に閃光がきらめき、アイデアが弾けた……一つの椅子で届かなかったら、二つの椅子を重ねればいいんだわ!

 二つでも駄目なら、三つよ。三つでも駄目なら……