Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 会話は平行線を辿る。エドモンドがその心に抱えている秘密を教えてくれない限り、これが延々と続くだけで、二人は永遠に他人のままだ。

 オリヴィアは苦しくて下唇を噛んだ。
 悲しかった──。自分が悲しいのはもちろんだが、それ以上に何よりも、エドモンドの表情があまりにも切なくて寂しそうだったからだ。オリヴィアの両目におなじみの涙が溢れてきて、視界がぼやけだした。エドモンドは苦々しげに頭を振る。

「泣くんじゃない、オリヴィア」
 彼の声は優しくて、それが余計にオリヴィアの涙を誘った。

「泣かないでくれ……」

 二人は一緒にうつむいた。
 そして、お互いを慈しむサラブレッド同士のように、頬と頬、額と額を、ゆっくりとなで合わせた。口づけではない……それよりももっと親密な行為。

 ひどく切なくて、このまま胸がはちきれてしまうのではないかと、オリヴィアはぼんやりと思った。