エドモンドは一瞬、絶句し、横に控える小姓が鼻から笑いを噴き出した。
「ど、どうしましたの? 私、なにかおかしな事を言ってしまったかしら?」
彼らの奇妙な反応にオリヴィアは焦り、聞き返した。エドモンドは喉を通すように咳払いを一つすると、小姓をひと睨みし、オリヴィアに向き直った。
「申し訳ないが、マダム、これが私の家だ」
「ええ、ええ、存じています。立派な納屋ですわね」
「そうではない──納屋は向こうの東の端にある。ここが私の住む家だ。サロンがあり、仕事部屋があり、食堂があり、私の寝室がある。今は私たちの寝室と言うべきかもしれないが」
「ええ、存じて……え?」
「ジョー。さぁ、彼女を屋敷に案内してくれ。私は馬の面倒を見る」
「分かりました、バレット旦那」
エドモンドは支えていた新妻の腰から手を離し、馬車を引いていた御者台の方へ向かった。御者になにやら話しかけ、労をねぎっているようだった。
そんな夫をぼんやりと見つめるオリヴィアを、ジョーと呼ばれた小姓が邸宅の入り口へ誘おうとする。
嗚呼。
今この瞬間に頭上へ落ちてきても不思議ではない雰囲気の、悲惨な感じにひび割れた石の門をくぐると、オリヴィアはバレット邸に初めて足を踏み入れた。
「ど、どうしましたの? 私、なにかおかしな事を言ってしまったかしら?」
彼らの奇妙な反応にオリヴィアは焦り、聞き返した。エドモンドは喉を通すように咳払いを一つすると、小姓をひと睨みし、オリヴィアに向き直った。
「申し訳ないが、マダム、これが私の家だ」
「ええ、ええ、存じています。立派な納屋ですわね」
「そうではない──納屋は向こうの東の端にある。ここが私の住む家だ。サロンがあり、仕事部屋があり、食堂があり、私の寝室がある。今は私たちの寝室と言うべきかもしれないが」
「ええ、存じて……え?」
「ジョー。さぁ、彼女を屋敷に案内してくれ。私は馬の面倒を見る」
「分かりました、バレット旦那」
エドモンドは支えていた新妻の腰から手を離し、馬車を引いていた御者台の方へ向かった。御者になにやら話しかけ、労をねぎっているようだった。
そんな夫をぼんやりと見つめるオリヴィアを、ジョーと呼ばれた小姓が邸宅の入り口へ誘おうとする。
嗚呼。
今この瞬間に頭上へ落ちてきても不思議ではない雰囲気の、悲惨な感じにひび割れた石の門をくぐると、オリヴィアはバレット邸に初めて足を踏み入れた。


