ぐーたら令嬢は北の修道院で狂犬を飼う


 王族はかつて、狼の一族の血を引いていたといわれている。そうは言っても、千年くらい前の話で、今は普通の人間と何ら変わりない。
 ただ、時々狼の一族の血を濃く引いて生まれる子どもがいるのだとか。
 そして、そんな子どもは普通の人間には手に余る。だから、北の塔に幽閉するのだという。

「もし、その子が生きていたら、わたしと同じくらい?」

 わたしは窓の外を見た。
 森の奥に背の高い塔が見える。
 あれが、噂の北の塔。
 執事が小さく笑って言った。

「今、考えていることを当てて差し上げましょう」
「どうぞ」
「面白そうだから会いに行こう」

 執事の言葉にわたしは満面の笑みを見せた。

「正解」

 ◇◆◇

 北の修道院から北の塔はさほど遠くない。わたしの部屋の窓から見えるくらいだし。
 私は馬車に乗って向かった。

「ねえ、見て。魔石がごろごろ転がっているわ」
「本当ですね」