ぐーたら令嬢は北の修道院で狂犬を飼う


 わたしはここまで荷物を運ぶためについて来た使用人に指示を出し、案内された部屋にすべての荷物を入れた。
 石造りの修道院は室内も肌寒かった。
 夏とは思えない気温だわ。冬になったらどれほど寒いだろうか。
 もっと暖を取るためのアイテムが必要そう。
 お父様にお願いすればすぐに届けてもらえるけど、毎回それを続けるのは無理があるわよね。
 もう少し自給自足できるようにならないと。
 快適のためなら、努力を惜しまない。それが、わたしだもの。

 わたしは案内された部屋を見て、頷いた。

「悪くないわね」

 わたしの部屋には広さは劣るけれど、最上階のこの部屋はとても見晴らしがいい。
 気に入った。
 最高級の寝具も持ち込んだ。
 ここをわたしの楽園にするわ。

「あなたの部屋もいい部屋にしてもらったから安心ね」
「私にまで気遣いいただきありがとうございます」
「いいのよ。わたしのものは大切にする主義なの」

 わたしのために働いてくれる人はみんな宝物よ。グータラするには何よりも人が財産になる。わたしだけでは百時間かかる仕事も最高の人材がいれば、最小限で済むもの。

「これからいかがなさいますか?」
「まずは手紙を書くわ」

 わたしが言うやいなや、執事はささっとレターセットを用意した。そして「紅茶を入れてまいります」と言って、去っていく。
 執事はわたしのことをよく知っている。わたしが手紙を書くときは紅茶を飲みたいことも。

「さて、と」