ぐーたら令嬢は北の修道院で狂犬を飼う


 オルトは短く言うと、小さく頷く。
 もちろん、オルトの部屋は用意させている。
 しかし、彼はそこを一回も使ってはいない。
 なぜか、わたしの部屋で寝起きする。足元で小さくなって眠る。

「そこ、狭くない?」
「ない」

 王都で暮らしていたときに特注で作ったベッドから、狭すぎるということはない。
 飼っていた犬も、よくわたしの足元で眠っていたし、慣れている。
 しかし、オルトは人間で犬ではない。ベッドの上でゴロゴロと転がりたくはないのだろうか。

「まあ、いいわ。おやすみ~」

 わたしは彼に一言伝えると、彼の返事を聞く前に眠りについた。


 寝覚めは最悪だ。
 いつもならば、まどろみの中で起きるか起きないか、五回以上は悩んでから身体を上げる。
 しかし、今日はそんな暇は与えてくれなかった。
 オルトの唸り声が部屋中に響いていたから。

「グルルルル……」
「オルト、どうしたのよ?」
「音」
「音?」

 わたしはふわりとあくびをして、窓の外を見る。
 目の前に広がる光景に目を細めた。
 馬車と兵の大群が修道院に向かってきている。

「あら。予定より早かったじゃない」