ぐーたら令嬢は北の修道院で狂犬を飼う


 オルトは深く頷く。
 オルトを連れて帰ってきてから一ヶ月。オルトはわたしにだけ懐いた。
 修道院に暮らす人々を威嚇し、わたしの執事にも警戒し、わたしの側を離れない。
 まあ、今までの一人で北の塔に閉じ込められていたのだから、これくらいは可愛いものだと思う。
 そして、オルトはわたしの頼み事や願い事のためだけに、せっせと働いた。
 わたしが「肉が食べたい」と言ったら、山に住む動物を狩り、「寒いから毛皮がほしい」と言えば、こうやって熊を狩ってくる。

「ありがとう。これでぬくぬくで眠れそうだわ」

 わたしは礼を言うと、オルトが背を屈める。
 これは、頭を撫でろという合図だ。
 彼はわたしよりも身長が高い。座っている時は安易に撫でられる。だから、わたしは彼が座っているときにだけ撫でていた。そうしたら、いつの間にか撫でられに来るようになったのだ。
 減るものでもないし、彼の髪は手触りもいいので嫌ではない。
 オルトは満足そうに頭を上げると、太陽を見上げた。

「昼寝」
「そうね。そろそろお昼寝の時間だわ」

 北の修道院に来てよかったことは、毎日同じ時間にお昼寝ができることだ。
 それだけで、どれほど幸せだろうか。
 イーサン殿下の婚約者だったときは、昼寝がしたくても社交や勉強でどうしても時間が取れなかった。
 もっと早く、イーサン殿下に見切りをつけて、ここに来ればよかったのよ。
 考え事をしていると、オルトがわたしをひょいっと抱き上げる。
 これも日常茶飯事になってしまって、驚かなくなった。最初こそ驚いたけど。
 わたしの部屋は修道院の最上階。
 階段を上るのも大変なのよ。オルトが嫌がっていない以上、任せてもいいと思ったのだ。
 はー、快適快適。
 部屋に到着したオルトは、わたしをベッドの上に置いた。
 そして、寝っ転がる私の足元に小さくなって座る。

「オルトも寝るの?」
「寝る」