ぐーたら令嬢は北の修道院で狂犬を飼う


 わたしは小さく呟いた。

「オルトとはどう?」
「オルト……いい」
「よかった。じゃあ、今日からあなたはオルトよ」

 オルトは何度も与えられた名前を口の中で反芻する。忘れないように、身体に刻みつけるようだった。

「お嬢様、失礼しま――……」

 扉を叩き、執事が部屋に入ってくる。すると、オルトはわたしのうしろにしがみつき、隠れた。

「グルルル……」

 警戒心強く、執事を睨む。そして、獣のような唸り声を上げた。
 執事が肩をすくすめる。

「どうやら嫌われてしまったようです」
「慣れていないだけよ。すぐに慣れるわ」
「そうでしょうか?」

 執事は苦笑を浮かべた。

 ◇◆◇

 オルトが来てから、生活は快適だった。
 とにかく彼は身体が強い。
 そして、狩りが得意だった。狼の血を強く引いたというのは本当のようだ。

「ミランダ、これ」
「あら……! 熊じゃない!」

 オルトは朝から出かけたと思ったら、大きな熊を狩ってきた。
 一人でどうやって狩るのかはわからない。
 オルトの数倍大きい熊を引きずって帰って来たのだ。

「もしかして、昨日毛皮が欲しいって言ったから?」