【マンガシナリオ】学園2位のイケメン幼なじみに好きな子がいるようなので、私が告白の練習相手になるよと提案してみた結果



〇志尾美津理(しおみづり)の部屋(夜)



スマホのメッセージアプリの画面に『みい好きだ』の文字が表示されている。



美津理(誤爆してる……)



平凡な容姿で、肩よりも少し長いくらいの明るい茶色の髪(染めておらず生まれつきの色)の美津理は部屋着でベッドの側面に寄りかかるようにして座り、幼なじみの亜麻井埜永(あまいのと)から送られたメッセージ画面を見つめている。

けれど次の瞬間、メッセージが画面から消えた。



美津理(あ、消えた)





〇モノローグ



――私、高校二年生の志尾美津理には両隣に住む三人の幼なじみがいる――



戸建ての家、三軒の絵。



――同い年で生まれた時からずっと隣の家に住んでいる亜麻井埜永――



埜永の姿の絵。サラリとした黒髪で、少し冷たさを感じさせるくらいの表情で端整な顔立ち。

『昨年の学園文化祭ミスターコンで準優勝』の表示。



――そして小学校の時に反対隣の家へ引越してきた広辺(こうべ)兄妹――



――同い年のミイとひとつ年上の朔弥(さくや)くん――



広辺兄妹の姿の絵。ふたりとも色素の薄い髪色でふんわりとした髪質。

ミイはロングヘアの美少女、『昨年の学園文化祭ミスコンで優勝』の表示。

眉目秀麗な朔弥には『昨年の学園文化祭ミスターコンで優勝』の表示。



――私と同じ高校に通う三人は大切で大好きな幼なじみだ――





〇美津理の家の前(翌朝)



少し慌てた様子で家を出てくる制服姿の美津理。



美津理「おはよう。ごめんね遅くなっちゃった」



そんな美津理を笑顔の広辺兄妹と、クールな表情の埜永が迎える。



ミイ「大丈夫だよ~、いこ」



美津理と広辺兄妹は歩き出そうとするが、埜永が美津理の手首を掴む。

それに気づいて振り向く美津理。



美津理「埜永?」

埜永「髪……」



ふたりの様子に気づいた広辺兄妹が振り返る。



ミイ「髪? あ、みづりん寝ぐせがある」

美津理「え、本当? 恥ずかしいっ」



埜永の手を振りほどき気味に美津理は自分の髪を押さえた。

「あ、いや……」と言葉を詰まらせる埜永。

広辺兄妹が美津理に笑顔を向ける。



朔弥「寝ぐせがあっても美津理ちゃんは可愛いから大丈夫だよ」

美津理「朔弥くん、お世辞を言っても何にもあげられないよ」

朔弥「ハハ、本当のことなんだけどな」

ミイ「あとで直してあげるね~」

美津理「ミイありがと~っ」





○通学電車(朝)



美津理(ひぇ~、今日は特に混んでる……)



駅で乗る時に混雑していて、人の波にのまれそうな美津理の身体をグイッと埜永が引っ張った。

埜永は電車内の壁に手をついて自分の身体で守るように美津理に壁ドンをする。



美津理(ミイは大丈夫かな……)



美津理は埜永に守られながらミイの姿を探し、朔弥と一緒にいて無事なことを確認しホッと安堵の息を吐く。

そんな美津理の姿を少しだけ悲しそうな表情で埜永が見つめている。



埜永「気になる?」

美津理「うん、そりゃぁね」

埜永「そっか……」



埜永の手が動き、美津理の前髪に埜永の指が触れた。

美津理の胸がドキンと跳ねる。



埜永「前髪、切ったんだな」

美津理「え、よく気づいたね。ほんの少ししか切ってないのに」

埜永「そりゃ、わかるさ」



今までクールな表情だった埜永が、ふ、と微笑する。

美津理の胸が再びドキッと跳ねた。



美津理(笑うと可愛いんだよね……)



照れくさくなった美津理は埜永から視線を逸らし、自分たちを見つめる女性たちがたくさんいることに気づく。



女子高生1「あの人かっこいい……」

女子高生2「ほんとだ」

女子高生3「芸能人だったりして」



美津理(埜永ってやっぱりモテるんだ……)



埜永「昨日の……」

美津理「昨日?」



話しかけてきた埜永の方へ視線を向けたら、思ったよりも近くに埜永の秀麗な顔があり、美津理の心臓がドキッと大きな音を立てて跳ねた。



埜永「俺からのメッセージ、見た?」

美津理「え、あ、うん……」



美津理は埜永から送られてきたスマホのメッセージアプリの画面に『みい好きだ』の文字が表示されていたのを思い出す。

そしてすぐに、ミイの顔が頭に思い浮かんだ。



美津理(埜永はミイのことが好きだったんだ……。ふたりはお似合いだし、幼なじみとして応援したいな)



埜永が大きなため息をついた。



埜永「朔弥とミイには言わないで」



美津理は頷きながら「わかった」と答える。



美津理(告白は自分でしたいよね)



埜永「あと、それ見てどう思ったか教えてほしいから、夜、会って話したいんだけど、いい?」

美津理「うん、いいよ」



美津理が微笑むと、埜永は安心したような笑みを浮かべた。

駅に着くとミイが美津理の方へ駆け寄ってくる。



ミイ「混んでたね~、大丈夫だった~?」

美津理「うん、埜永が一緒にいてくれたから」

ミイ「あれ、埜永は?」



周りを見回すと、電車内で埜永のことを噂していた女子高生が埜永と朔弥に連絡先を聞いているところだった。

埜永はほぼ無表情で「無理、教えられない」と断り、その隣で朔弥が「ごめんね」と優しく言っている。



ミイ「埜永はホント、女子に塩対応だよね」



呆れたようにミイが言い、美津理は「そうだねぇ」と困ったように小さく笑う。

すると美津理とミイのそばに他校の男子高生が近づいてきて「今度会えたら渡そうと思ってました。これ読んでください」とミイに手紙を渡し走り去っていった。



美津理(三人とも、モテて大変そうだなぁ……)