「え、あ……いいんですか?」
「さっき触り方慣れてたから猫好きなのかなあと思って」
「少し前に飼ってたことがあって。……じゃあ、ちょっとだけ、失礼します」
触ってたの、見られてたんだ。
顔がじわりと熱くなるのを感じながら、おずおずと手を伸ばす。
さっきまでこの子──ミルのことしか見えていなかったのに、今は、ミルよりも隣にいるギャルソンくんに意識が集中してしまって。
彼に見られていると思うと、撫でる手つきもなんだかぎこちなくなる。
「外で飼ってるんですね」
「んーん室内。けど最近家出グセがついて、さっきも家帰ったらミルいなくて焦った」
「ああ、家出かあ……。男の子だから外の世界を冒険してみたいのかも」
「それはある。けど一番の原因は俺だろうな、最近構ってやれなかったから」
ふと、声のトーンが落ちた。
思わず隣を見たときには、もうそこに笑顔はなかった。



