「ボコボコ? やば、悲惨」
ギャルソンくんがまた笑う。今度は肩を揺らしながら可笑しそうに。
ざわ、と、不覚にも胸が騒いだ。
噂と違うのは困る。こんなによく笑う人だとは思ってなかった。
たしかギャルソンくんは「めったに笑わない」とか「能面」だとか、そういうハナシだったはずじゃ……。
逆に噂通りなのは──いや、それ以上だったのは、整いすぎた容姿。
柔らかそうな黒い髪、左耳に光る銀色のピアス。
今は涼しげで爽やかに見える切れ長の瞳も、真顔になればきっと冷たさを感じる。
初めてこんなに間近で見た。
怖いくらい綺麗……だ。
ギャルソンくんの腕の中にはいつのまにか黒猫がいた。
「あ、その子……ミルクちゃん、でしたっけ」
「そう、俺の飼い猫。ミルって呼んでる。呼び方べつにこだわりないけど一応雄」
「へ〜、男の子なんだ……」
「触る?」
そんな誘惑に思わずそわっと体が動く。



