ギャルソンくん、

突拍子もない彼の提案に、メーテルくんは一瞬眉を顰めはしたものの、すぐに皮肉な笑みを浮かべた。



「あー……まあ、悪くはないな」

「おおっ、そうこなくっちゃ!」

「半端な立ち位置で喰い散らかされるよりマシだろ。なあ、夏井サン」



メーテルくんの瞳がスッとこちらにスライドしてくる。

ぞんざいな言い草だったけれど、私の反応をこっそりと伺うような気づかいを感じた。



「………どういう意味ですか」

「ギャルソンに連れられて来たからといって、すでにモノにされたわけじゃないからな。ぎりぎり、まだ間に合う」



答えになっていない。
そんな声をあげる前に、大きく一歩距離を詰められ、私は再び逃げ場を失った。



「せめて“どっちのモノか”くらいは選ばせてやるよ」



先程と同じように肩を抱かれ、だけど心なしか、そのぬくもりは先程よりも深く、鼓動を乱すには十分で。

そこのわずかな隙を突くようにして、彼は私の手を取った。



「今度こそ、ふたりきりになれる場所に行こう」