ギャルソンくん、

───“犠牲者”?

いったい、なんの。



「悪い悪い、こいつまだ中2だからいろいろ失礼なこと口走っちまうんだよ。あとできつーく言っとくわ」

「あ……いえ、ぜんぜん気にしてないので」



中学生か……。どうりで会場にいた男性たちより幼く見えたわけだ。



「お姉さんごめんね。お詫びに僕がなんでもお願い聞いてあげる」

「へ? いや……大丈夫だよ。むしろ、私のほうが……。部外者なのに、ここに来ちゃって」

「ふうん? ずいぶん欲がないんだね」



褒め言葉として受け取ることはできなかった。なんだかつまらなさそうな口振りだったから。



「精神的にかなり満ち足りた生活を送ってるのか、もしくはその逆か。どっち?」


つき、とたしかな胸の痛みが伴った。私が言葉に詰まったことで、翳りを帯びた空気がゆっくりと軋んでいく。



「ねえ、メーテル君。月皇(ウチ)、最近やけに平和で退屈すぎやしませんか」



痺れを切らしたように彼が沈黙を破った。

その瞳は、何かを企むように弧を描いていた。無邪気の仮面を借りた悪意がぞくりと背筋をなぞる。



「この子、メーテル君のモノってことにしちゃいましょうよ」