ギャルソンくん、

するとギャルソンくんは、私からあっさり離れて背を向けた。



「じゃあ、メーテル君のとこに一緒に行きましょうか」

「あ……、どう、も」


金髪の男性に促されるまま足を進める。

廊下の突き当り、最奥の扉が開くと、それまでの静けさが嘘のように空気が一変した。


ぼんやりとした光に包まれた仄暗い空間、耳をつんざくほどの激しい音楽、ざわめき合う人々の声。
それらに圧倒されるあまりくらくらと景色が散って、一瞬すべてが遠くに消え去った。

恐怖にも似た感覚だった。



「メーテル君すみません、今いいっすか?」


その呼びかけに応じた彼と目が合った瞬間、無意識に安堵のため息がこぼれていた。

この中で、私が知るただひとりの存在────

だったはず、なのに。



「誰だよそいつ」

「この方はギャルソン君の……」

「はあ? あいつの女なんか連れて来んな。吐き気がする」