「どうぞ、入って」
ギャルソンくんが手前の扉を引くと、室内から漏れた仄かな光が私の足元に触れた。
一階の空間はがらんとしていて静かだった。
天井では青白い室内灯が瞬いている。
灰色の床をたどるように視線を動かすと、その先にエレベーターの扉が見えた。
重くて冷たい金属の扉。
あれに乗ってしまったら最後、私は元の世界に二度と戻れなかったりして。なんて。
「さて、問題です」
エレベーターの前でぴたりと足を止めて、彼がこちらを振り返る。
その端正な顔に天井からの青白い光が差しているのが、なんだか不気味だった。
「本日の会場は、何階でしょうか」
そう、不気味なくらい、綺麗だった。



