ギャルソンくん、

𓂃˚‧ 𓆸


あれから15分ほど歩いたと思う。


私は、大通りから外れた場所に立ち並ぶビル群の一角にいた。

いつのまにか華やかな雰囲気は薄れて、風がどこからか錆びた鉄のにおいを運んできている。


“そういう組織”の会合の場、と聞けば、大きな倉庫のような建物がイメージとして浮かぶけれど、ギャルソンくんが足を止めたここは、十一階建ての────



「“クリニック”って書いてあります……けど」

「昔はね。そうだった」


「昔、は……」

「移転して空きビルになったのを先代の幹部が買い取ったらしいよ。壁面看板が残ったままだけど、カモフラージュとしてちょうどいいってことでそのまま放置されてる」



スモークのかかった扉に、ミラーガラスで覆われた各階の窓。

ただの寂れたビルにしか見えないこの建物も、私の隣に彼がいるというだけで、途端に存在が異様なものに思えてくる。