ギャルソンくん、

「ごめーん、すぐ追いかけるから先行ってて」


「出たよ、あゆのマイペース。いーけど遅刻しないでね、あと、ギャルソンくんに攫われてもうちらは責任とらないから!」


おどけたセリフを無視して、私は黒猫に向き直る。


……やっぱり似てる。

猫にしては丸めな目と顔の輪郭も、鼻の横にある小さな白い模様も。

わたしの飼い猫だったキキと重ねるなと言うほうが難しいくらい……。


そんなわけないのに。
本当にキキなんじゃないかと。

もしくは、生まれ変わりなんじゃないかとか。


手始めに耳のつけ根、そして額、あごの下。

慣れてきたら背中をまんべんなく円を描くようにゆっくり撫でながら。


「名前、なんていうの?」


びっくりさせないように小声で語りかけた──その矢先。


「知りたい?」


突然聞こえたその声に、心臓がドッと跳ね上がった。