どういう、状況?
こちらの意志なんてお構いなしに、彼は私の手を取り、ぐいと自分のほうへ引き寄せた。
「ギャルソンなんてやめとけ。大人しい顔して腹ん中真っ黒だし、滅多にキレねえけど、キレると冗談じゃ済まねえのよ」
「ひ、あの……」
低い声がすぐ近くで響いて、思わず上ずった声が漏れる。
気づいたときには彼の腕の中にいた。
「表面上はみんなに優しーけど……万人に向けることができる優しさって、冷たさの裏返しだと思わねえか」
「……はあ、」
────メーテルくんに、抱きしめられている。
その事実が頭を支配して、話があまり入ってこない。
「あゆかちゃん、ひとつ忠告」
その声はどこか楽しげだった。
「間違ってもギャルソンにだけは抱かれるなよ。……わかったか?」



