ギャルソンくん、

寝起きだからなのか、それとも元よりこういう調子なのか。

じっと見つめていた矢先、不意に視線が絡む。


「名前なんてゆうの」

「え、私ですか?」

「他に誰がいるんだよ」

「……、夏井です」

「なつい? それ苗字?」

「はい」

「下の名前は」


口調はゆったりとしているのに、瞳には射抜くような鋭さがあった。

ごくり、と息を呑む。


「歩果です」

「なついあゆか……。お前、ちょっとこっちに来い」

「は、……え?」

「いいから早く」

「は、はいっ」


圧に負けて、仕方なく彼のもとへ急ぐ。

ちらりとギャルソンくんを見れば、他人事のようにスマホを触っていた。