ギャルソンくん、

「大丈夫なんですか?」

「なにが?」

「だってさっき、起こさないほうがいいって」

「……ああ、大丈夫だよ。俺がやれば平気」


ギャルソンくんはベンチに近づいて、眠っている彼のもとに屈み込んだ。

耳元にそっと唇を寄せて、なにかを囁く。

するとその声に答えるように、相手のまぶたがゆっくりと開かれた。


「誰、そのオンナ」

───刹那、心臓がひときわ強く脈打った。

その瞳は、開いてからまだ一度たりとも私を捉えていないはずなのに。



「教えないよ、秘密」

「よくこの公園に入れたな」

「気に食わない?」

「……いいや別に。(ここ)を仕切ってるのお前だろ、好きにしろよ」


彼は────メーテルくんは、どこか投げやりにそう言った。